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不良の彼は 甘くて強引
第13章 けじめの時

「柚子ちゃん」

暫く翔は柚子の横で彼女が落ち着くのを待っていた。

翔の呼びかけに、柚子は泣きはらした目で彼を見上げる。


「…何かあったのかい」

「……ッ」

「…市ノ瀬のことだろう?」

「…っ…なんで、そのことを…!?」


柚子は不思議でならなかった。どうしてこの人には何もかもがお見通しなのだろう。


「彼と何かあったのかい?」


その低く、包み込むような優しげな声に

胸を打ちつける荒波がそっと鎮められていくような気がした。

そんな彼になら
ありのままに言える気がした。



「…匠さんは、本気ではなかったの…っ」

「……」

「彼にとってわたしはただの遊びだったの……」


こんな状況で初めて気付く

わたしは彼に惹かれていた…。


あの時はあんなに憎かったのに、今はもう──

その声を聞くだけで、その手に触れられるだけで…どうにかなりそうなくらいに胸が高鳴ってしまう。

大学生にして、きっと初めての恋だ…。


なのに


「彼が好きなのは、違う女の人だったの」




──余計に、つらい





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