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第13章 けじめの時

「──…」

翔は柚子を抱きしめる代わりに、その濡れた頬に手を添え指で彼女の涙を拭った。



「どうして君が、そんな風に思ってしまっているのかは知らないけれど…」

「……っ」

「俺には、彼が遊びのつもりだとは思えないな」


その言葉に柚子がハッとした目で翔を見上げた。


それはまるで
すがるような眼差し


「…どうしてですか…!?」


そんな柚子に翔は小さな子供をなだめるかのような眼差しを向ける。


「…ただの遊びの女なら、祭りに連れて行く必要なんてあったと思うかい？」


「でも…っ」


「直接言われたのでなければ、そんな風に決めつけてしまうのは早すぎるかもしれないね…」




本当はそんなこと、俺にわかる筈もなかった。

市ノ瀬が何を考えているのか…

彼女に執着しているように見えたのも、あいつにとってはゲームか何かを楽しむのと同じような感覚だったのかもしれない。


あいつの正体を知った今…もしそうだったとしても何ら驚くことはないだろう。



だがおそらく

柚子が求めているのはそんな言葉ではない。



「きっと、遊びなんかじゃないさ」


何の根拠もないこの言葉こそを、君は求めて泣いているのだろう？


それが俺にはわかってしまう。



悔しいけどね…。