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不良の彼は 甘くて強引
第13章 けじめの時

「……!!」

紗織は匠の胸にうずめていた顔を上げて

真っ直ぐ彼を見た。


その時の匠の表情を彼女は今まで知らなかった。


悲しそうなわけでも、苦しげなわけでも、冷めているわけでもないが

無表情とは全く違う。

しかもその瞳は、揺らいでなどは決してない。



「どういうこと…」

「今はもう、違う…」


匠はもう一度繰り返す。



「…あれから事情は変わったんだ」


「……っ」


「俺は決してモラリストではない…、だが、二人の女を同時に抱く趣味はない」


「……匠!!」


「一方を手に入れるのなら、他方にはけじめをつける、……今がその時だ」


その揺るぎない瞳が匠の本心をものがたる。


紗織は彼のシャツを鷲掴んだ。



「何よそれ…、わたしの完敗じゃない…!!」

「…そうだな」

「ふざけないでよ!全部あなたのせいなの、責任とりなさいよ!」

「…俺を、殴るか?」

「…ッッ!?」

「お前を無理やり奪ったのは俺だ。…今日だけは許してやる、…俺を殴ればいい」



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