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不良の彼は 甘くて強引
第14章 そこを動くな
「ハァ!…ハァ、ハァ……!!」
無我夢中で走り続ける柚子は、息苦しさにマスクをとり鞄に押し込む。
“もう…走れない…っ…”
柚子は限界を感じ、たまたま開いていた誰もいない講義室に入り込んだ。
ピシャリと扉が閉まる。
「……ハァ…、面倒くさい奴だな…!」
後を追ってきた匠は扉の閉まった講義室を確認し、一度立ち止まって呼吸を整えた。
「ふっ…、馬鹿馬鹿しいな」
何だって自分はこんな必死に追いかけているんだ。
大勢の人間に見られてとんだ恥をかいてしまった。
あいつが
逃げるからだ──
匠は扉に手をかける。その時…
「…ハァ…ちょっと、待て…っ…!!」
背後から息を切らした声に呼び止められ匠が振り返ろうとした瞬間
襟元を掴まれ力任せに壁に押し付けられた。
「──…ッ!!…何の真似だ茶髪」
「君こそ…何の茶番のつもりだ、これは…!」
匠は長身だが、翔も同じくだ。
押し付けられた匠と翔の目線がぴたりと合う。
「あいつの様子がおかしい…、そうか、お前の仕業か」
何の抵抗の様子も見せない匠は、少々面倒くさそうな溜め息をついた。
「…違う、原因は君の方だろう」
「…?」
「いったい何が目的だ…!! 彼女を弄ぶのがそれほど楽しいか」
普段はもの静かな翔
この時の彼は明らかに感情的だった。
「五日前の…祭りの日、何故彼女は泣いていたんだ…!」
「…何の話だ」
全く身に覚えがない匠は翔の言葉に顔をしかめる。
壁から背を離し、翔のシャツを掴みかえした。