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不良の彼は 甘くて強引
第14章 そこを動くな
廊下で互いの襟を掴み合う
大学の花形二人組。
他の生徒が見たらどう思っただろう。
「祭りの日?どういうことだ…」
翔の襟元を軽く締めるように引き寄せる匠。
だが翔は少しの怯みも見せなかった。
「あの日の夜、彼女は泣きながら駅に向かい走ってきた」
「・・・」
あの日は確かに
柚子を駅のホームまで送ったはずだ。
一度駅を出たのか、それなら…
「…なるほどな」
匠の中に一つの仮説が立ち上がる。
“見ていたのか…”
匠は翔の襟を離した。
それに合わせて翔もその手を離すと、同時に、翔の友人が彼の荷物を片手に階段を上がってきた。
「…二度と、あの子を傷つけないでくれ」
「…ああ」
翔の友人は何故か険悪なこの二人を前に呆然と立ち尽くしている。
「悪いね、荷物ありがとう」
まだ何か言うことがありそうな様子で、翔は友人から荷物を受け取り匠に背を向けた。
…お前に指図される筋合いはない
誰もいなくなった廊下に佇む匠はそう小さく呟いていた。