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不良の彼は 甘くて強引
第14章 そこを動くな
誰もいない
明かりもついていない
薄暗い講義室。
そこは普段柚子が使うものよりいくらか広く、前方の黒板に向かって放射状に席が備え付けられていた。
その陰に柚子は小さく身を潜めていた。
ギィッ....
扉が開かれ、人が入ってきた足音が聞こえる。
柚子はさらに縮こまった。
カツン...、カツン...!
室内に響き渡るその音。
柚子は不意に初めて匠を見たあの倉庫
その階段をゆっくりと降りてくる彼の姿を思い出す。
「…、鬼ごっこの次はかくれんぼのつもりか?」
低く響き渡る男の声。
カタンッ
その声に反応して、柚子は小さく音をたててしまった。
「……!!」
「……」
音のした方を匠の目が捉え
その足先はその場所へと真っ直ぐに向けられる。
「──…俺があの女といたのを見たのか」
カツン、カツン...
「俺はお前を駅まで送ったはずだが? 」
カツン、カツン...
「…答えろ」
カツン....!!
「…は、ハンカチを…、渡しに……!!」
目の前で自分を見下ろす匠に
柚子は震える声で答える。