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不良の彼は 甘くて強引
第15章 実家
「おかえりなさい!」
台所から母の声がした。
柚子がリビングに
…少し広めの畳部屋へ入ると
真ん中に置かれたコタツに父が座り新聞を読んでいた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
今は夏だからもちろんそのコタツに布団はない。
柚子は腰を下ろす。
母が冷たい葡萄を皿に入れて持ってきた。
「おかえりなさい」
改めて言われる。
「うん、というか玄関の鍵閉めとかなきゃ!いくらこっちが田舎だからって言っても…」
「まっ、その言い方…、すっかり都会の女になっちゃって」
不用心さを注意する柚子を母が茶化した。
そんな二人のやりとりを、父が愉快そうに眺めている。
柚子の父は、元々は東京で検事をしていた。
そこで母と出会い
わたしが生まれて…
5歳の時、母の実家である遠く離れたこの地に引っ越した。
東京ではマンション暮らしで
その記憶は微かにあるのだが…。
柚子にとってはここが生まれ故郷、ふるさとだ。