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不良の彼は 甘くて強引
第16章 海
「おい、……柚子」
「ハァ……、ハァ……」
「…おい、…もうわかったから後ろ向いてみろ」
軽く酸欠状態になりそうな匠は、しがみついてくる女の背中をたたき、子供をなだめるような口調で話しかけた。
「後ろ…」
やっと顔をあげた柚子は、ゆっくりと振り返る。
「……あ」
それは
実に見事な夕焼けだった。
碧いはずの水の色。
照りつける太陽によって一時的に銀色の世界へと変えられていたそれは
ベールを一枚取り去ってみたら……
なんだ、こんな色だったんだ。
茜色の空を自らに映しだして。
水平線の向こうに沈んでいく太陽が、最後の力を振り絞って、こんな風に世界を美しく変えていくのだ。
「機嫌は直ったかよ、お嬢様」
皮肉たっぷりな匠の言い方
その声に、匠の首に抱きついた柚子は我にかえる。
「…あッ」
なんて大胆不敵な行動。
焦って手を離し、恐る恐る匠の顔を見上げる。
バチッ...!
彼と目があった
やばっ……!!
バシャッ
反射的に柚子は沖の方へ逃げていた。