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不良の彼は 甘くて強引
第16章 海
当然ながら、逃げる柚子はすぐに追いつかれる。
バシャッ バシャ
「…あ!!…ごめんなさい!!」
捕まった彼女はひたすらに謝っていた。
「今更逃げるか…」
「ごめんなさい…!」
「俺を絞め殺そうとしたのはお前が初めてだよ」
「……、ごめんなさい」
自分はそんなに強くしがみついていたのか…。
…恥ずかしい。
「…少し落ち着け」
逞しい腕にすっぽりと包まれた柚子は、頭上で囁かれるその声に導かれ再び海を見やった。
「──…」
同じように水平線に目をやる匠。
波の音が静かに流れるなかに、柚子の耳には、押し付けられた胸から彼の鼓動がはっきりと聞こえていた。
それはとてもゆったりとしたペースで深く鼓膜に響いてくる。
それを聴くわたしの鼓動は、どうしようもないくらいに速まってしまっているというのに。
卑怯……!!