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不良の彼は 甘くて強引
第17章 深海の魔物
「匠さん…!?」
掛け布団ごとわたしを抱き上げた彼は、そのまま歩き出す。
「いきなりなんて声出しやがる…!」
柚子の悲鳴に、匠の耳はジンジンと痛んでいた。
「どうしたの…!?」
「出掛けるぞ」
出掛けるといっても…
正確な時間こそわからないがまだ深夜のはずだ。
重たい瞼をこする柚子。
そんな彼女を抱え匠は部屋の扉を開けた。
二人が来た海のそばには、簡単な宿泊用の施設がある。
施設といっても寝泊まりができる部屋が用意されているだけで、特別な設備はこれといって何もない。
…海小屋、とでもいったところだろうか。
日帰りにするには距離があるので二人はその夜そこを利用していた。
ログハウスのようなその建物は、匠が階段を降りるたびにギシギシと木の音が鳴る。
誰もいない受け付けを通り過ぎ、二人は静かにまだ日の出ぬ外へと出て行った。