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不良の彼は 甘くて強引
第17章 深海の魔物

建物を出た柚子の鼻をかすめるのは潮の香り。


どこに行くんだろう

気になって仕方がないが、そんな事を聞いても答えてくれないのは百も承知。



「あの…、重いでしょう?自分で歩けますよ」

なんだか申し訳ない。


「人形抱いてるみたいだ」


柚子の問いかけに対して

匠は歩みを止めないままに、ほいっと彼女の身体を軽く空中に放り投げた。


「!!!」


一瞬、本当に宙に浮いてしまった柚子は小さな悲鳴とともに身体をこわばらせる。



それきり何も言わなくなった柚子は、薄い掛け布団に包まれたまま靴も履かずに、その腕に大人しく抱き抱えられていた。




「……」




匠が柚子を連れてきたのは昼間に泳いだその海岸だった。


勿論そこには誰もいない。
先ほどの男たちも…。






「……、あぁ……!」



柚子の唇からは無意識に深く溜め息が漏れていた。


それは落胆ではなく
感嘆の溜め息。



それは

匠がわざわざもう一度
柚子をここに連れてきた理由。



美しかった──




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