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不良の彼は 甘くて強引
第17章 深海の魔物
たった数時間の間に
なんという変貌を遂げてしまったのか──
辺りに灯りは無く、遠くに浮かぶ島のシルエットが微かに見える程度だ。
…だがどうだろう。
海だけが
その場所で輝いていた。
月光をうけてキラキラと輝くのは揺れる水面。
それは昼間の太陽のまばゆい光を映したものでは決してなくて、随分と控えめに…わたしの瞳の奥へとその宝石を散りばめてくる。
月の美しさ
それを包む、漆黒の美しさ
押し寄せては引いて
引いては、押し寄せて…
絶え間ないさざ波の音が、それらの魅力溢れた光景に魅入られた者を
さらに、さらに引き込もうとする。
「これのために海へ来た」
言葉を発することを忘れてしまった柚子の代わりに、匠が口を開いた。
「…お前に見せたかった」
「……すごく、綺麗…!」
やっと出た柚子の声は、興奮して上擦っている。
「お前も好きか……?」
「好き…!!」
その光景に魅了された彼女は自分の顔を覗き込む彼の瞳を恥ずかしがることなく、正面から見つめかえしていた。