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不良の彼は 甘くて強引
第17章 深海の魔物
好き──
そう言った柚子の唇に目をやる匠の喉が、ゴクリと音を立てた。
「そう…か」
柚子は再び静かに広がる夜の海へ視線を戻してしまう。
その光景に夢中になっている彼女を抱え、匠は砂浜へと下りてゆっくりと海岸へ近づいていった。
「……?」
まだ、近づくの…?
ここで十分綺麗なのに。
“行きたくない…”
夜の海は、何かが怖い。
柚子には昔からそんな気持ちがあった。
「……!」
無意識のままに柚子の腕は匠の肩に回されていた。
その身体は強張っている。
「…?──どうした」
腕の中で、柚子の身体が小さく縮こまったのを感じた匠。
…何を怖がる?
「近寄るのは怖いわ…!」
「…俺が海に投げ入れるとでも?」
「そうじゃなくて…」
「なら、幽霊か?」
「……ッ」
そうでもなくて…!
いや
それに近いかもしれない。
つまり、そのようなものが歩いていてもおかしくない雰囲気がこの場所にはあるのだ。
夜の海…
暗く、妖しく、儚い…
美しいものには、その裏に潜む危険な魅力が見え隠れするものだ。