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不良の彼は 甘くて強引
第18章 因縁
修一の小言を無視してキッチンへと向かう匠。
仕様がないので代わりに飛んできた本を恨めしそうに睨みつけていた。
「いびきなんかどうしようもないだろ…」
お前が女と長続きしない原因はそれだと指摘され、
何やら思い当たる節がありそうな修一は何も言い返せず悪態をついた。
「絆創膏貸せよ」
「そんなものない」
「…くそッ、俺の商売道具によくも…!」
頭を掻きむしりソファーから起き上がった修一は何の断りもなくバスルームへと向かう。
匠は冷蔵庫から冷水を取り出して、毎日欠かさない朝の一杯を飲み干す。
こんなやり取りは日常茶飯事。
自分の家を持たずにその場しのぎの女の家を渡り歩く修一の生活は、気楽なようで、当然のごとく簡単にホームレスになれる。
その前に匠の家に押し掛けるのもまた、彼の日課だ。
「…餌までやる気はないからな」
「わーかってるよ!!」
シャワーを浴びて出てきた修一は、鞄を引っ張り出し身支度を整える。
彼にはこの後、近くの工事現場でのお勤めが待っていた。
「……ったく、いいよなぁ金持ちの坊々は…。これから大学へお勉強か?」
「遊び人は黙ってろよ」
「どっちが遊んでんだか…、夏は女と楽しく海でラブラブしてきたんだろ?」
「黙れ…、二度と泊めんぞ」
「大目に見ろって、最近は夜も冷え込んできたし」
「勝手に凍死しとけ」
十月も半ばを過ぎると夜は急激に冷え込み始める。
この時期になると頻度の上がるこの急な居候に、匠は毎年のように呆れかえっていた。