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不良の彼は 甘くて強引
第18章 因縁

「…あ」
一人、家へ帰ろうとしていた柚子の目に、少し遠くを歩く匠の姿が見えた。
冷たい秋風の吹き始めたこの季節
彼はジャケットを羽織っている。
「……」
そのまま足を進めながらボーっと彼を眺める柚子。
駐輪場に入った匠。
「──…?」
ふっと彼の顔が上がり、後ろを歩いていた彼女の姿を捉えた。
「…!」
一瞬足の止まった柚子
駆け寄ろうとした。
でも…
「…あっ」
一度彼女を認識したはずの匠は、ふいと顔をそらした。
こちらに背を向けた彼を見て走りかけた柚子の足が再び止まる。
今、確かにわたしに気づいたのに…
無視されたのかしら。
同じようなことが先日もあった気がする。
「……っ」
よくわからないけど、なんだか切ない。
“避けられてる…?”
自分を拒絶したような彼の背に気まずくなり柚子は立ち去ろうとした。
すると
顔を伏せ後ろを向いた彼女に、逆に匠が振り返った。
「どこに行く…、さっさと此処へ来い」

