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不良の彼は 甘くて強引
第18章 因縁

バイクを引いて歩く匠の斜め後ろを柚子がついて歩く。
ゆったりとした歩調の二人はキャンパスを出た。
「…この後は何かあるのか」
「バイトです」
「またバイトか」
もともとは週二日だったはずなのに、気づいた時には四日に頻度が上がっている。
最近増えたんじゃないかという匠に、柚子は仕方がないと苦笑いした。
「だって、お姉さんの方は今年受験だし…、そろそろスパートかけなきゃいけない時期じゃないですか。センター試験まで100日切ったんですから」
そう言ってみたものの
匠はどこか納得できない様子だ。
「匠さんだって、この時期は勉強大変だったでしょう?」
「さぁ…、勉強なんぞ真面目にした覚えはない」
「……なッ」
な、何て嫌みな…
そんなこと聞いたら全国の受験生が泣くわよ。
私だって、必死に勉強してきてどうにか受かったのに!
「そうですか…、"普通の"受験生はこの時期から必死に勉強するんですよ…」
柚子はふつふつと沸き起こる悔しさを胸のうちに抑え込み《匠にもわかるように》訂正した。
「言い直さなくてもいい、……凡人の苦労も少しは知っているさ」
匠は鼻で笑う。
「…む」
"凡人"である柚子は斜め前を歩く男の背中を睨みつけた。

