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不良の彼は 甘くて強引
第19章 異変
互いの身体が離れ、柚子は匠の顔を見上げる
その彼女の表情は明らかに匠を心配していた。
その時の彼の顔──
髪は少し乱れていて目は開ききっておらず、やはりどこかやつれている様子だ。
そんな彼の吐息からは、僅かだが酒の匂いもする。
「…何か用か」
彼女の身体にまわした手を離すと、匠は玄関を上がり部屋の奥へ戻って行く。
柚子も靴を脱ぎ後について行った。
“何かが変…”
部屋の様子に目をまわした彼女は、その光景を"変"だと形容するしかなかった。
別に散らかっているわけではない
その部屋は以前来たときと同様に、シンプルで物の少ない、比較的きれいに片づかれている。
だが、どこか異様に感じた。
「何故ここへ来た」
「最近…、大学に来ていないと聞いて…」
「誰が言った」
「匠さんの同じ学部の人です。心配してましたよ」
その部屋には、なにか"生活感"というものがなくなっていたから。
「…体調が悪いとか?」
益々心配になってきた。
「いや…、講義が面倒だっただけだ」
匠は適当な理由をつけて誤魔化す。
「……」
柚子はソファーの前に置かれたテーブルの上に缶ビールをひとつ見つける。
手にとってみると中身はすでに空だった。