この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
不良の彼は 甘くて強引
第19章 異変
靴も履かないままの柚子は階段を駆け降りる。
怖い……!!
それは久しぶりに感じた彼への純粋な恐怖だった。
エントランスにたどり着き自動ドアを通り抜ける。
そこの受付にはもう管理人の姿はない。
「ハァ……!!」
息を切らして外へと飛び出ると、そんなに時間が経っていたのであろうか…
通りはすっかり暗闇に包まれていた。
“どうしてあんな…! ”
自分がいったい彼に何をしたというの…。
理不尽な怒りはいつものことだろうか。
確かにそうかもしれない
でもあんなに冷静でない彼は初めてだった。
「鞄…」
鞄、忘れた…
彼の部屋に置いたままだ。
もう、馬鹿みたい…!!
零れ落ちる涙を拭い、どうしようもない状況に途方にくれる。
財布も無ければ鍵もない
だが、匠の部屋に戻るという選択肢は今の彼女には有り得なかった。