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不良の彼は 甘くて強引
第19章 異変
「……泣いてるのかい」
「えッ…!?」
翔に指摘され慌てて目をこする。
市ノ瀬と何かあったのか。
いいえ、何も……!
何もありません…。
翔のその問いかけを彼女は必死に平静を装い否定した。
「……」
暗がりのせいで柚子の表情はよく見えない。
だが鞄を持たず、ましてや靴さえ履かずに出てきた彼女の姿は何もないというほうが無理だ。
そして
街灯に照らされ、一瞬だけきらめいた彼女の頬を流れたそれは…
翔の目に辛うじて映った。
まったく…眼だけは昔から…
何故こんなにいいのだろうか。
「本当に…何でもないですから…っ」
無理な弁解を続ける柚子。
翔は壁から背を離し、そんな彼女に身体を向ける。
「…嘘、だね」
その脚は彼女の方へと向かい進んだ。
「あッ……!!」
こちらへ近づく彼の影はぐんぐんと大きくなり、柚子は思わず後ずさる。
「何があったの?」
「何も……!!」
「本当のことを──…」
「あの…!…先輩ッ──…、……ッ!!……??」
柚子の声が途切れる──
「本当の事を…言ってくれ……!!」
翔の腕に真正面から抱き締められた彼女の頭上で、苦しげな声が聞こえた──