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不良の彼は 甘くて強引
第20章 すれ違いは…
翌日
案の定、目の腫れてしまっている柚子は、翔に礼を言って彼のアパートを後にした。
「俺も一緒にいこうか?」
「いいえ……、一人で大丈夫です」
心配する翔に、精一杯の笑顔を向けて…。
「……ふぅ」
匠の家に戻ってきた柚子。
荷物を受け取らないと
それから……
彼に謝らないと。
──何を?
それは正直わからないけど…。
でも匠さんだって、本当にお父さんが亡くなったのなら…あのおかしな行動も仕方のないことなのかもしれないし。
それを拒否したわたし。
悪かったかもしれない。
意を決した彼女はエントランスへ入って行く。
彼の部屋にコールをかけるため部屋番号を入力した。
プルル... プルル...
プルル...
「…おーい、そこの君!!」
「えっ…?」
振り向くと、管理人のおじさんがわたしを呼んでいた。
「君、市ノ瀬さんに用の人かな?」
「そうですけど…」
呼ばれて駆け寄った柚子に、おじさんは鞄を差し出した。
それは正真正銘、彼女が昨日忘れていった鞄。
「市ノ瀬さんに頼まれたんだ。黒髪ロングの女の子が自分を訪ねてきたら、これを渡してほしいとね…」
すぐに気が付いて良かったよ
管理人さんは親切そうに笑っていた。
「……」
そっか…
会ってもくれないんだね。
「…ありがとうございます」
柚子は笑顔で、差し出された荷物を受け取った。