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不良の彼は 甘くて強引
第20章 すれ違いは…
「──何をしている!?」
今の声……!
「…せ、先輩……!」
匠ごしに遠くに見えたその人影は暗くてよく見えないものの、その声を聞き間違うことはない。
「よかった…!」
それを聞いた彼女から思わずこぼれた安堵の声が、匠には癪に障った。
「誰だ、…それは…!」
駆け寄った翔は、匠によって宙吊り状態にされたその男を見て困惑する。
「誰でもない…!!」
匠は沼田の首を離し、雑に地面に投げ捨てた。
座ったまま後ずさりした沼田は、自分を見下ろす匠に怯えながら縮こまっている。
「…今すぐ消えておけ」
匠の脅し口調の忠告を耳にした途端、火がついたように逃げ去っていった──。
「…何だこれは」
翔には状況が呑み込めない。
「柚子ちゃん…」
「これは…!」
どこから説明すればいいのだろう。
戸惑い始めた彼女の姿を見て、匠が冷たく笑った。
「よかったな…助けが来て、お陰で奴の命を救うことができた……」
「…そんな!」
どうしてそんな冷たい事をいうの?わたしを助けてくれたのは……!
何も応えない柚子に、匠はさっさと向きを変え立ち去ろうとする。
“待って !行かないで…!! ”
少しずつ遠のく彼の後ろ姿に柚子は心の中で叫んでいた。
そしてその脚が、ひとりでに彼を追いかける──
「待って!!!」
「……!?」
柚子は両手で、後ろから匠の腕を掴んだ。
「お願い、待って…!!」