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不良の彼は 甘くて強引
第20章 すれ違いは…

「…柚子」

自分の腕にしがみつく彼女に、今度は匠が動揺する番だった。


「わたしを…、突き放さないで……!」


柚子の口からこぼれた言葉は
匠の耳に微かにとどく。


普段なら有り得ない彼女のこの行動は、匠にとってあまりにも可愛らしすぎた。




「……」

彼の目が一瞬だけ泳ぎ、その男らしい喉仏が困惑して大きく上下する。







だが──


この時の彼は、自分に素直にはなれなかった。


素直になるには、彼の苛つきのパロメーターがあまりにも高まってしまっていたのだ…。






「突き放すな…だと?…おかしな事を……!!」

「…!?」

「俺を拒んだのはお前の方だ……あ?……不謹慎、なんだろう?」

「……そ、それは!」



匠は柚子から目を離し、こちらを黙って見つめている翔を見やった。


その顔に蔑みの笑みを浮かべる。



「…お前にはあそこにいるじゃないか、…お似合いの相手がな」

「先輩は…!!」

「確かあいつも法学だったか、…正義面したお前たちにはピッタリだ」




──…酷い



「なんでそんなこと……っ」


柚子は声を震わせて、匠に詰め寄る。





「柚子ちゃん、………ストップだ」



言い返そうとした柚子を翔が制する。



ゆっくりとこちらに近づき
匠の腕から柚子を引き剥がした。


「先輩…!!」


彼女を背中に隠すように、二人の間に割り込む。




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