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不良の彼は 甘くて強引
第20章 すれ違いは…




柚子をおいて歩き続ける匠。



「ぐッ……!」


背後から僅かに聞こえてきた彼女の泣き声に、匠は歯を食いしばる。

遠ざかるにつれて次第に小さくなるはずのその声は、歩くごとに彼の背中にまとわりつき、掴まれた腕がキリキリと痛んだ。



《突き放さないで……!!》



俺の心を乱すあの言葉。



「……ハッ、無理だ…!!」



突き放すなだと

ならどうすればいい…!!




俺が本能のままにお前を求めたならば

俺の本性を垣間見たならば

お前は

怯えるじゃないか……!!




《…先輩……!》

だからこそ匠には、あの時の柚子の安心した声が余計にこたえた。



「当然だッ…」

吐き捨てるように呟く。



俺はお前を怯えさせることしかしてないのだから。


柚子が安堵するのは俺ではなく、間違いなくあの男の方。



あの茶髪──


幾度か対峙するたびに、益々実感していく……。

あいつは俺が、もっとも嫌う部類の人間だ。

そして茶髪にとってもそうだろう。



俺たちは真反対だ。



そして、"正しい"人間は

……あいつの方だ。



そんなことは百も承知

だからこそ、俺はあいつが気に食わない……!!




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