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不良の彼は 甘くて強引
第21章 弱者は弱いか

その時、数人の人影が椅子に座った彼女を取り囲んだ。

「…?」

柚子は窓から目を離し、後ろに立つその者達を見上げる。



「……ねぇ、あなたが矢崎さん?」

「ひとりぼっちでどうしたの?…市ノ瀬さんはいないのかしら」


一見、柚子を心配するような言葉を並べたその女達だが、その顔にはからかうような笑みが浮かんでいた。



「いませんが…」

柚子は困った目線をその女たちに向ける。



“ こういう人ってどこにでもいるものね……”



膨大な数の人間が集まる総合大学には、当然ながら多種多様な人物がいるのであり…

このように、匠に対して熱狂的な女も少なくないのである。


ところが

その匠と付き合っていると噂になったのは他学部の一年生。

彼女達からしたら柚子ほど目障りな人間はいない。




「あら、あなたが市ノ瀬さんの彼女って噂は嘘だったの?」

「…あ の」


わざとらしく驚いてみせる女に、柚子からは思わず溜め息が漏れる。



この大学に来たのだから、今まで懸命に勉学に励んでいた筈だ。なのに、こんなくだらないことしか楽しみがないなんて……。



「知らないの?彼女だったけど、振られちゃったのよ~」

「ああ、そうだったわね」

「…何で市ノ瀬さんは、こんな子供っぽい女を相手にしたんだろ?」

「納得できない…!!」




「……」


目の前で盛り上がる女たちを
柚子は呆れた顔で眺める。




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