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不良の彼は 甘くて強引
第22章 囚われた生き方
「わたしは…この犬がお気に入りです」
一通りを見て回った二人は広場内のベンチに腰掛ける。
その前方には、このイルミネーションの目玉である高さ約20mの巨大もみの木のライトアップがすごい存在感で立っていた。
柚子は携帯で写真を見ながら
一番可愛いと思った犬をかたどったイルミネーションを翔に見せる。
「俺はこっちの猫だな…」
「先輩は犬より猫派なんですか?」
確かに、猫も捨てがたいけれど……。
「…実は俺、犬は苦手なんだよ。小さいころに噛まれてから、どうも好きになれなくてね……」
まぁ、そんなことはイルミネーションには何の関係ないのだが。
翔は柚子から携帯を受け取りパタリと閉じる。
「男の人って、意外と犬嫌いな人が多いですよね。わたしのお父さんもそうですし、匠さんもたしかそう言って……、──…!」
そう言いかけて、柚子は口をつぐんだ。
「……」
翔はゆっくりと彼女の横顔に向き直る。
「…ごめんなさい」
「…?…何で謝るんだ」
彼女の髪にうっすらと積もった雪を優しく撫で落とした。
「やっぱり無理をしている…」
「そんな事ない…!」
柚子は彼の顔を見上げる。
無理なんてしてない
先輩が作ってくれたこの時間、わたしは辛いことを忘れて楽しむことができた。
ただ、時々
匠さんの事を思い出してしまうだけ……。
「…クリスマスの夜に君を連れ出したなんて知られたら、俺はあいつに殺されかねないな」
柚子の戸惑いを洗い流すように、翔は彼女の黒髪を撫でながら苦笑いする。