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不良の彼は 甘くて強引
第22章 囚われた生き方
「わたし、ずっと匠さんのことが怖かったんです」
何故、彼女は翔にこんな事を言っているのか…。
彼のその雰囲気から醸し出される包容力が、彼女の口が思うままに動くのを許していた。
「優しい時もあるのに、時々、すごく…冷たい目で人を見ていることがあるんです。不意に、そう…、冷たい目で…」
「……」
「…それが、その時の彼の雰囲気が怖くて…、ずっと気づいてないふりをしてきたけれど……!」
今思えば、彼は無意識のうちに親の仇を睨みつけていたのだろうか……。
「……」
目を閉じて、じっと柚子の言葉を聞いていた翔。
ふと、前方のライトアップされたもみの木を見上げた。
「…小さいころは、イルミネーションが大嫌いだった……電気の無駄遣いだって意地を張ってて」
「…?」
「でもこうして見ると…、ああ、やっぱり綺麗だなーって認めざるを得なかったよ。……いくら理屈を並べてもね」
先輩…?
柚子には翔が何を言いたいのかがわからなかった。
「…だけどもし、この光景の美しさを欠片も感じることができない人間がいたとしたら」
「……」
「ほんの少しも…綺麗だと…そういう気持ちになれない人間がいたなら……!」
「……!」
「その人は…そんな自分自身に、ずっと一人で苦しんでいるんだろうな」
そう言うと
翔はツリーから隣の柚子に目を落としニコリと微笑んだ。