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不良の彼は 甘くて強引
第23章 お前を喰わせろ
「…匠さん……!」
それは
夢の中で幾度と無く俺を呼んでいた声
「……っ…!!」
動揺を悟られぬように、匠はすぐさま彼女から視線を離す。
「あのッ…お話が…!」
「…帰れ」
柚子の言葉を遮りその一言だけ言い捨てた匠は、
逃げるようにエントランスへと入って行った。
大股で管理室の前を通り過ぎる彼の足取りはどこかぎこちない…
カードキーをかざした彼の前に自動ドアが開かれた。
だがどうしたことだろう
ドアが閉まる直前に、カードキーも無しに滑り込んできた女がいる。
「……ハァ」
小走りで駆け込んだ彼女は、恐る恐る匠を見上げた。
「……!?」
焦った匠はさらに歩調を速めて階段に進む。
それでも、後を追って彼の後ろを駆け上がる足音が遠のくことはない…
冷や汗さえかきはじめた匠
部屋の前まで来た彼が後ろを振り返ると、そこには変わらず、鞄を両手で抱えて息を切らす柚子の姿があった。