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不良の彼は 甘くて強引
第23章 お前を喰わせろ

「…修一に会いに行ったそうだな」

「……っ」

「どこまで聞いた…」


しばらくの沈黙の後

それを破ったのは匠だった。




「修一さんには…あまり」


どこまで言っていいものか

修一さんがわたしに話したという事実は、あまりバラしてほしくはないかもしれない。



「…、調べたんです、匠さんのお父さんのこと…!」

「……」

「お医者様だったことも、有名な外科医だったことも」


そして…


「…手術を失敗して訴えられたこと」


自殺未遂のこと…。







「・・・・」




キッチンに背を預けていた匠は無言のままに身体を起こし、ゆっくりと彼女に近づく。


ビクッと反応した柚子は僅かに後ずさった。



無表情の匠はじりじりと柚子を追いつめ彼女の背が壁につくと

逃げ場を失った柚子の顔の横に両手を突き、縮こまった彼女の顔を覗き込んだ。




「…それで?」

「えッ…!?」


皮肉っぽく歪められた彼の口から出る冷たい声が、目の前の柚子に浴びせられる。



「…同情でもしてくれる気か…?」

「……!」

「生憎だが、そんなものは求めてはいない…。勝手に俺を憐れむな…!」

「…そんなッ」

「で…、話とは何だ。慰めに来たのならさっさと帰るんだな」



帰れ…と言いつつも、彼女の逃げ道を奪う両腕が外されることもなく──

壁に追い詰められた獲物をいたぶるように、匠は柚子の顔をただ覗き込みその反応を待っていた。




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