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不良の彼は 甘くて強引
第23章 お前を喰わせろ
「まだ間に合う…!!」
鞄を抱き締めたまま
柚子は匠の胸に頭を押し付ける。
彼女の頬を離れた匠の手は置き場所を無くして宙をさまよい、柚子の頭に添えられた。
「俺はもう…後戻りはできない」
すでに狂っている。
匠の言葉に、柚子は俯いたまま首を横に振る。
「そんなこと…ありません」
だって匠さんは──
柚子の脳裏に浮かぶのは、あの夏の夜
『お前もこれが好きか…?』
『好き…!』
『そう…か』
共に眺めた銀色の海
漆黒の水平線
あなたは
あの景色を好きだと言った。
「自然の美しさに浸ることも、その目映さに目を細めて魅入ることも…」
「…!?」
「美しいものを、素直に綺麗と思える……。誰もが持っている"普通"の感情を、あなたは見失っていない…!」
「普通…!?」
《ほんの少しも…綺麗だと…そういう気持ちになれない人間がいたならば…》
先輩が気づかせてくれたこと
匠さんは……普通の人。
怖くなんかない……!
狂ってなんかいない…!!