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不良の彼は 甘くて強引
第23章 お前を喰わせろ
匠は腕の力を抜き、彼女の身体を離した。
「さっきからお前は…何を抱えている」
柚子がずっと両手で抱きかかえている鞄。
匠が彼女を引き寄せるに従って、二人に挟まれたその荷物が邪魔で仕方がない。
「あッ、これは…」
柚子が鞄のチャックを開けると中に見えたのは
簡単なラッピングを施されたパウンドケーキ。
──それは昨晩、彼女が電話で受け取った、親友からのアドバイス。
『…仲直りしたいんなら…、料理とかお菓子とか、手作りで持って行ってあげればどうかな』
『そんなのでいいかな…?』
『大丈夫よ、 ハロウィンパーティーの時も柚子のお菓子美味しかったわよ』
『…ありがとう』
『あとね、…絶対に手渡しだからね』
『そうなの?』
『絶対よ! …じゃあ、頑張りなさい』
「匠さんに…渡そうと思って」
そう言って半分を鞄から取り出したところで、彼女は固まった。
「あ…、つぶれてる」
当たり前だ。
あれほど強く抱き締めていたのだから。
「何でもないですッ…」
慌てて鞄に戻そうとしたそれを、匠は彼女から取り上げた。