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不良の彼は 甘くて強引
第25章 温もり
「…あのー…匠さん」
「どこか出掛けるか」
「…え!?」
何か言いかけた柚子は、突然の提案に驚いた声をあげる。
匠はチャンネルころころとを変えながら退屈そうに言った。
「──…ここにいても暇だからな」
「……!」
夏の海以来、二人でどこかへ出掛けたことはない。
嬉しいけれど
「…本当にいいんですか?」
「…どうした」
だって…
「わたし…海から帰ってきた日からずっと、…匠さんに避けられてると思ってました」
「…!?…何故そうなる」
匠には彼女の言っている事がいまいちわからなかった。
父親の悲報があった後ならまだしも、それ以前で、彼女を避けていたという心当たりが彼にはない。
「キャンパスの外でなかなか会ってくれないし」
「…! それは…。──事情があったからだ。お前が気にすることではない」
「大学で会っても、匠さんが顔をそらすことが何度かあったので…」
地味に傷ついてたりして
「ああ…、あれは…」
匠は思い出したように呟く。
「俺を見つけた途端、お前が嬉しそうに駆け寄ろうとしてくるから…──」
そこで声が途切れた。
「・・・・」
…にやけそうになる顔を隠していただけだ。
「?」
またもや顔をそらす彼の横顔を、柚子は不思議そうに見ていた。