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不良の彼は 甘くて強引
第25章 温もり
「……何を笑っている」
「…えっ?笑ってますか?」
口元に手をやりクスリと笑った彼女の動きを、匠は見逃さなかった。
「ふふふっ…、…何でもないです…」
「……!!」
本格的に笑い出した柚子を見て、匠の顔はますます不機嫌になる。
柚子はそれに気が付かない。
彼女は嬉しかったのだ。
何をしても、何が起きても
器用にそつなくこなしてしまう。
いつもどこか冷めていて
苦手なものなんて何もないのではないかとさえ思っていたのだから。
そんな彼でもやっぱり苦手分野はあったのだ。
それがまさか動物達だったとは…
これもまた予想外。
その動揺を悟られまいとこらえるあたりといい…
実に人間らしいではないか。
“ 匠さんは普通の人 ”
自分と同じ…一人の人間。
そしてこうやって、苦手なことにも付き合ってくれている
優しい姿だ。
匠さんは今、変わろうとしてくれているんだ。
少しずつだけど……。
…匠の努力は、どうやら彼女に伝わっているよう。
「楽しいですね…、匠さん」
そのことに、匠の方は気づいているのだろうか。
「…こんな所…、二度と連れてきてやらん……!」
──今の彼に
そんな余裕は無さそうだ。