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不良の彼は 甘くて強引
第26章 連鎖
「少し…眠っていろ…」
ここでこれから起こる事を
お前が見る必要はない。
力の抜けた彼女をジャケットでくるみ、そっと床に寝させると、立ち上がった匠は扉の方に目をやった。
「……っ」
ほぼ同時に立ち上がった健吾の鼻からは出血がみられる。
彼はそれを乱暴に拭った。
「…何故柚子を狙った」
「人質に使う予定だった。…お前の目の前で犯すってのも面白そうだけどな」
「……」
「…お前が昔よくやってたみたいによ……匠」
健吾のぎらつく瞳の奥に
匠への怒りが見え隠れする。
“裏切り者…”
かつて、彼は匠とよく行動をともにしていたのだ。
それは中学に入ってすぐのころ
同じ学校の3学年にヤバい奴がいると聞いて興味を持った健吾は、軽く喧嘩を売りに行き
そこで酷い目にあわされた。
だが彼は
そのどこまでも冷徹な眼差しと
一寸の揺らぎのない真のワルの風格に
男ながらに惚れ込んでしまったのだ。
大人にも常識にも囚われない
反社会的な匠の生き様に…健吾は憧れた。
──それがどうだ
高校を卒業した匠が選んだ道は有名大学への進学。
高い学歴を拠り所にして偉そうに振る舞う連中が大嫌いだった彼は、匠の進学に失望した。
結局は、お前 "も "そうなのか…
社会に認められて安定した職をもつ…そこに意義を見いださずにはいられないのか。