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不良の彼は 甘くて強引
第27章 柚子の過去


「柚子…お前は強い」


お前は弱くない。

この俺を止めた女だ。
そのへんの野郎たちより…ずっと強い。


「…弱い女など初めから興味もつわけないだろう」


これほど強く、惹かれるわけがないだろう。



「じゃあ なんで!?」


乱闘の後で傷ついた、匠の顔を真っ直ぐ見上げた彼女の目には堪えきれない雫がみるみるうちに溜まっていく。

そんな柚子の表情に、切なげに目を細めた匠は、手の甲でふわりと彼女の頬に触れた。



「──…お前も、うすうす感づいている筈だ」



口の端をふっとあげ、柔らかく笑ってみせた彼は



チュッ…



わたしの唇に触れるだけのキスをして



「…じゃあな」


「──…!!」



その一言だけを

たったそれだけを残して

ドアの向こうへ消えていった。














後を追うことができない


彼女の背中を覆ったままの
その…ぶかぶかのジャケットには





「…っ」



彼の頭から滴った血で

僅かに血痕が残っていた。








───…







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