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不良の彼は 甘くて強引
第27章 柚子の過去

毎年この家に正月にこうして集まるのは、父、母、わたしの三人と、近くに住んでいる母の姉家族。
叔父さんは地元の学校で教師として働いており、叔母さんの方は母と同じように結婚を期に仕事はやめている。
「…柚子ちゃんは、大学生活はどんな感じ?やっぱり法学科はやることも多くて大変でしょう」
あらかたお腹が満たされたころには、話題はそんなぐあいになる。
「ふふ…頑張ってるところです」
「でも偉いわぁ。こんな娘がいたら、親にとっても誇りでしょうね」
叔母さんの声には、別段に皮肉っぽさが含まれているわけではない。
「本当だよ、柚子さんはしっかり勉強に励んで自分の将来を切り開いているんだ。……なのにお前ときたら…!」
「そ、そんなことないです」
叔父さんまでもが一緒になって柚子を褒め称える。
彼女は照れ隠しに少し笑った。
「…ったく、柚子と比べるのは反則だろっ」
叔父さんに"お前"と言われたのは、わたしの従兄弟、つまり叔父さんの息子。
わたしより四つ年上の彼は、大学卒業後に就職した。今は医療器具メーカーの新人として働いている。
毎日毎日…残業ばかりでろくに眠れず、だがあまり大きな会社ではないので残業代が支払われないそうで。昨日はずっとそのことを愚痴ったいた。
でも、社内の人間関係が随分と楽しいらしくて…。だからなかなか文句を言えないんだとか。
「おや、義兄さん。彼は十分に立派な男ですよ」
父が助け船をだした。
本当に…その通りだと思う。

