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不良の彼は 甘くて強引
第28章 失った免罪符


ひとりになった柚子

帰宅途中の彼女の足がぱたりと止まった。




「もう…会えないの…?」



彼はこのままいなくなってしまうの?


わたしの日常を、心をこんなにも掻き乱して…。匠さんは去っていく。

そうすれば、わたしは静かな大学生活を取り戻すだろう。

もともとはそうなることを望んでいた筈だ。


そうして、彼と過ごした一年間は過去の思い出に変わっていく…。

その思い出は、甘酸っぱいのかほろ苦いのか…どんな味になるのかは、今はまだ知ることができないけれど。




──…本当にそれでいいの?



「そんなの……寂しい」



柚子が持っている大きめの紙袋から男物のジャケットが覗き見えた。

いつか返しに行きたいと…毎日のように持ち歩いていたその紙袋──




もう一度だけ…
ちゃんと会って、話したい。


彼と会えば、自分でもわからないこの気持ちを整理できるだろうか。



「…会いたい…っ」


匠さんに

会いたい…!










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