この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
不良の彼は 甘くて強引
第28章 失った免罪符
これを渡したら
わたしと匠さんの繋がりがまたひとつ、失われてしまう──
逆に、これがあるからまだ切れないというような…そんな幻想にしがみついていたい…!
「…柚子?」
「渡さないっ…!!」
「…おい!」
「離して…っ」
彼女の腕を掴んだ匠の手を振り解こうと、身体を回して本格的に抵抗を始める。
暴れる彼女の両肩を匠の手が挟み込んだ。
「落ち着け…!」
「…っ」
自分を覗き込む彼の困惑した顔が見える。
…いやだ
そんな目で見ないで…ッ
益々大きくなる柚子の抵抗。
彼女の肩に掛かっていた鞄がずれ、ドサリと床に落ちる。
強く抱きしめる紙袋には
無数の皺が入っていた。
「わかったから…っ…取り敢えず落ち着け…!!」
「……!」
何故か突然に取り乱した彼女に、焦る匠の声からも余裕がなくなっていく。
そんな彼は、柚子の動きを封じるように彼女の身体をその腕で包み込んでいた。