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不良の彼は 甘くて強引
第28章 失った免罪符
双方、全く動きを見せない状態。
二人の鋭い目線が誰もいない廊下で交錯する。
「──…今の君はまさに、復讐という免罪符を捨てたも同然か…」
…捨てた後に、何が待っているのか。
自身の罪に向き合わねばならない時、…その心に何が生じるのか。
市ノ瀬は全て、こうなるとわかっていた筈だ。
それでも彼は…
中学時代にその手に渡され、愛着さえ持ち始めていたであろう復讐という塊を
──罪の意識から逃れることができる唯一の拠り所を、手放す道を選んだ。
…手放さざるを得なかった。
それは何故か。
この世で何よりも大切な…彼の愛した女が
そうすることを望んだから…。
「──…君が恐れているのは、彼女を悲しませることだけじゃない…」
問題は、もっと単純なところにある。