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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける


「先輩…?」

堪らなくなって顔を背けた背後の翔に、不安気な表情を浮かべたままの柚子が声を掛ける。


「あの…なんで先輩が…?」



………ッ



「……大丈夫。…じゃあ、あまり遅くなる前に帰ろうか」



そんな彼女に再び視線をもどし、安心させるように微笑みを見せる。

前に回した腕を引っ込めるとサッと立ち上がり、机上の鞄を持って出口へと向かった。



「あ…!…わたしの鞄は自分で持ちますから…──」


スカートを軽く手で払いながら、柚子は慌てて彼の後を追う。




講義室を出たところで、翔に追いついた柚子は後ろから鞄を持つ彼の手を掴んだ。


「……」

「…っ、ごめんなさい…!」


そう言った柚子は無造作に掴んだその手を離し、立ち止まった翔を見上げる。



「…駅までだからすぐだよ。荷物くらいは俺に持たせてくれないか?」


「……でも、その鞄…重いでしょう?」


柚子は申し訳無さそうな口調で笑顔を見せてそう言った。




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