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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける
「…わからないんです」
自分がどうしたいのか…。
柚子は顔を前に向けた。
「匠さんを好きな気持ちも、彼を許せない気持ちも…!」
わたしの中では
本当だから…!!
「どっちが…どっちが間違っているの?」
すがるような彼女の瞳が翔を見上げた。
こんなことを他人に聞くなんて馬鹿らしい。だが柚子にとって、最後の頼みは翔しかいなかった。
彼なら…自分を正しい答えに導いてくれる、どうすればいいのかを教えてくれる
そう思えてならなかった。
「……」
真剣な彼女の表情
見えない答えに翻弄されるまま、助けを求めて俺を見上げる…。
「…そんなこと、俺にはわからないよ」
わかるのは…
君の、市ノ瀬への愛の深さ。
《わからない》
その返答を聞いて、柚子は目をそらさないまま唇をきつく結んだ。
当たり前…だよね。
わたしがずっと悩んできたのに、ここで先輩があっさり教えてくれたら…そっちの方が驚いちゃう。