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第29章 天秤にかける

「…君の助けにはなれる」

「…え……!?」


正しい答えなどありはしない。

問題は、君がどちらを優先するかにある。



「最後にこれを決めるのは俺じゃない、君が自分自身に問いかけるんだ。どちらを選びたいかを…」

「でも…」


自分自身に聞こうにも、わたしは自分の本心がわからない

自分で自分がわからない…!



「それだから、そこは…俺が手をかすよ」

「…どうやって…？」



翔はいつもの柔らかな笑顔を彼女にかえす。



「君が自分の本心にたどり着けるように、俺が天秤をひとつ渡そう」

「……天秤」

「それを使って考えたらいい…。市ノ瀬とともに生きる道を選びたいかどうかを」




「……!」


いまいちピンとこない。

だけど、先輩が言うならきっとそれがわたしを助けてくれる…。



「その天秤は…どこにあるんですか？」

「少し遠い所にある…。柚子ちゃんは休みはいつからだい？」

「…え？っと…」

「……遠出になりそうだけどね。今の君を、その場所に連れて行きたい」


どこだろう

柚子は首を傾げた。



「──…要するに、半分はデートの申し込みかな」

「……!」



驚いて小さく声をもらした柚子に

翔はクスリと微笑んだ。