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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける
────…
──後日
柚子は駅で翔が来るのを待っていた。
その駅は柚子のアパートからは普段の大学方面とは逆にある、新幹線が通る駅。
先輩は遠出になるって言っていたから…やっぱり新幹線で県外へ?
ぎりぎり日帰りできるから、特に荷物はいらないとも言っていたけれど…。
待ち合わせ場所の駅中にあるパン屋
柚子がそこに立って早10分、待ち人が現れた。
「…やっぱり、俺の方が遅かったか」
やれやれと言った様子で、どこか悔しげな声色。
「大丈夫ですよ。まだ…約束の時間より30分早いですから」
「ハァ…。本当はもう少し早く着く予定だったのに、予想外の混雑でね」
「…?先輩、車で来たんですか?」
「そうだよ。……どのくらい待ってたの?」
「わたしも、今着いたばっかりです」
「…本当かい?」
こういう時の君の言葉は全く当てにならないからね
そう言って、翔は改めて腕時計で時刻を確認する。