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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける
「──と、これは俺の勝手な想像だけれどね」
「確かに……」
そう考えると、此処にあるのは紛れもない日本の精神。
「……ふふっ、…負けましたね、わたし」
完璧な佇まいの中にある、それ自体への畏怖の念。
緊迫した空気感、でも其処に
終焉を怖がる人の弱さがばれないようにこっそり隠されている…。
そう思ううちに不思議とこの眺めに愛着を持てるようになってくるのはわたしだけかな。
いやきっと…先輩も同じということだろうな。
「…落ちつきます、ここ」
「…そう…か」
「……」
わたしはなんとなく、見える石を目で追い始めた。
「……?」
何度数えても、わたしには13個しか見つけられなかったけれど──
─────
枯山水を後にした彼らは、近くの寺を巡って歩いていた。
修学旅行で来た時は大勢のクラスメイトと一緒に慌ただしく見て回ったこの街だが
こうしてゆったりと巡ってみて初めて、その魅力に気付けているように思う。
柚子は、自分の気持ちに少しずつ…僅かだが…、ゆとりができてきているのを感じていた。
「…足は疲れてないかい」
「はい、大丈夫です」
それは、彼の気遣いがそうさせるのか。
京の町並みがそうさせるのか…。
そして時刻は回り
五時を僅かに過ぎた頃合い。
翔はタクシーを拾い、京都に連れてきた本来の目的…
その場所へ柚子とともに辿り着いた。