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不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける
「…このお寺に…?」
「…そうだよ」
タクシーを降りた二人。
周囲を威圧するような南大門。
数段の石段を登り、二体の力士像に睨まれながら境内へと門を抜ける。
「初めて此処に来た時はまだ小学生だった。それから…何か壁にぶつかるたびに、俺はこの場所を訪れる…──」
「──…」
「君も、聞いてみたらいい」
「…誰に……?」
「…今にわかるよ」
楼門から…石畳の参道を進みながら翔は意味深げに目を細める。
「……?」
柚子が辺りを見回すと、人の影は殆どなかった。わざわざ時間を遅らせた翔の考え通りといったところか…。
右手には講堂、左手に薬師堂や地蔵堂や、まだありそうだが、翔は真っ直ぐ参道を進んでいく。
そして、参道正面の本堂を通り過ぎさらに北側まで行き立ち止まった。
「…」
《霊宝殿》
その文字が目に入る。