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不良の彼は 甘くて強引
第30章 君、想い…
あまり長居するわけにもいかないから──
翔はそう告げて寄り道はなしに彼女と駅に向かう。
本当に…
彼がこの土地を訪れたのは、柚子をあの半跏思惟像の所へ連れて行く…それだけのためだったのだ。
自分を頼った彼女へ、彼がしてやれることはこれしかなかったから。
「…君の助けには、なれたんだろうか」
帰りの新幹線に乗り、動き出した車内で窓側に座った柚子に翔が尋ねた。
「…」
窓から目線を外し、隣の彼を見上げた柚子。
すぐに言葉の出てこなかった彼女は、答える代わりににっこりと微笑んだ。
…結局
何かが解決したのかと聞かれれば…何も変わっていない。
匠さんのことも、わたしの気持ちも……
天秤にかけてどちらが重いのかを量り取ろうとしていたけれど、そんな器用なことはできなかった。
わたしは、ただ…
赦してほしいと願っただけ…。