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不良の彼は 甘くて強引
第5章 なぜここにいるの


自らの悲運さに...
あるいはこれから何をされるのかという恐怖にか

唇を噛み締めたまま俯く彼女の目尻に
じわりと涙が溢れていた。



ポタ... ポタッ.. .



彼女のブラウスに涙の斑点が浮かび上がる。



「また、泣くのか…」


匠から、面倒くさそうな溜め息がもれる。



すると

涙で濡れた彼女の頬に

その長い指がそっと触れた。



肩を掴んだものと同じ手だとは到底思えない

実に優しい触れ方だった。





「……、来い」


彼女の肩をそのまま引き寄せ

手近な部屋に連れ込み


「あっ…」


何か言おうとする彼女を無視して片手間に扉を閉めると、もう一度壁に押し付ける。





「俺の前で泣いても無駄だ。…
…もっと泣かせたくなるだけだからな」



柚子の顎を掴んで上を向かせると


そっと唇を重ねた。




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