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不良の彼は 甘くて強引
第31章 それぞれの選択
いつからだろうか
あいつの存在が
違う意味で俺を乱すようになったのは。
「……俺はもう、あいつと関わるつもりはない」
「──…」
「俺はもうすぐ……日本を離れる」
「日本を…?」
いつからなのか──
このまま柚子と生きることに、恐れを感じ始めたのは。
俺を真っ直ぐに見上げてくるあの瞳を、素直に見つめかえすことができなくなってきたのは…。
「…それは…いったいどういうことだい」
「二ヶ月前から交換留学の推薦を申請している…。向こうの大学に転入することになる」
「その大学で、君はやりたいことでもあるのか」
「やりたいこと…?」
翔の問いに、匠は鼻で笑って返した。
「そんなものはない。そもそも今の大学に入った目的も…すでに失われた後だ」
医者になるのも
すべては復讐のためだった。
それを捨てた俺がここにしがみつく意味はない。
「…だが一応、向こうでも同様の単位はとることが可能だ。単位があれば…日本の国家試験も受けられる」
「……!」
「何の問題もない」
…これでいい
俺に残された選択肢は
ただ、これだけだ。