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レモンティーな朝焼け―母娘調教―
第16章 媚薬
「すみません、灰皿もいただけますか?」

遠慮がちに言うのだが、少しも心がこもっていないのは明白だった。

香奈子はタバコの煙が大嫌いだったのだ。

匂いをかぐだけで胸がムカムカする。

夫の友人だから我慢していたが、訪れる度に受けるヤニ臭さに辟易としていたのは、本人も分かっている筈なのに。

しぶしぶ立ち上がった香奈子は、壁際にあるキャビネットからクリスタル製の灰皿を取り出すと、テーブルに置いた。

「どうも、すみません・・・・」

既に火をつけていたタバコを持つ男は、満足そうに煙を吐いている。

ムッとした顔を隠すためもあって、香奈子はグラスを口に運んだ。

男への怒りで喉が渇いていたのか、冷たい感触に半分程を一気に飲んでしまった。

(フフフ・・・・)

ゴクゴクと鳴ならす喉を見ながら、竹内は不敵な笑みを浮かべている。

いつもながらの美しい顔立ちが、幾分疲れて見えた。

昨夜眠れなかったのだろうか、目の下に薄っすら影が残っている。

それもそのはずだった。

香奈子は薬を飲まされていたのだ。

強烈な媚薬は異常な興奮を呼び、身体を熱く火照らせる。

それを静めるには激しいセックスをする以外、方法はないのだから。

香奈子と圭子が何時も飲んでいるレモンティーにも同じく含まれている。

最近、変調を訴える香奈子の心配は当たっていた。

ごく少量ではあるが、媚薬が混ざっていたのである。
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