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嵐の夜に痕をつけられて
第4章 つけられた痕
昨日の停電はパソコン内のデータに大きな影響はなかったようだった。
むしろ社員のほとんどが停電があったことすら知らなかった。

よかった。
私も知らなかったことにして相沢さんとのこともなかったことにしよう。

あの時間、私はあそこにいなかったのだ。
相沢さんを見ても動揺しないよう必死に自分に言い聞かせた。


今日は金曜日だ。
余計なことは忘れて仕事を片付けて早く帰りたい。
土日は亮太の荷物をまとめていつでも持っていってもらえるように準備しておこう。

定時で帰ることを目標にいつも以上に机にかじりついて仕事をした。
やらなければいけないことはいくらでもある。
気が付けばあっという間に時計の針は十七時を指していた。


「よし、もうおわり!」


コーヒーカップを持って給湯室へ向かう。
非常階段の扉が目に入り、昨日のことが頭をよぎる。
少し胸がチクリと痛んだが、でもそれだけだった。

もう終わったことなのだ。
私がつまらない女なのは今に始まったことじゃない。

亮太と二年も付き合えたこと自体が奇跡だったのだ。
帰ったらすぐに彼の荷物をまとめてしまおう。

洗い終わったカップを棚に戻し、帰る支度をするため再び自分のデスクに戻った。
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