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嵐の夜に痕をつけられて
第4章 つけられた痕
「立川さん、今日は上がるの早いんですね」


後輩のサキちゃんが話しかけてきた。
朝からずっと集中していたせいか、同じ部屋で仕事をしているのに今日は全く視界に入っていなかった。


「金曜日だしね。早く帰って掃除したいんだ」

「あれぇ、てっきり田上さんとご飯かと思ったのに」

「あー、亮太とは別れたんだ」

「え! 本当に? なんでですかぁ?」


この子はわざと聞いてきてるんだろうなぁ。
こんなことが言えるのは若さ故なのか、元来の性格なのか。
どちらもか。

あなたの方が若くて可愛いからだよ、なんて言ったらどんな顔するんだろう。
そんな勇気ないけど。


「あー、まぁ、色々あってね」

「田上さんてモテますもんね。ずっと心配しなきゃいけないって大変そうですもん」


勝手に私が振られたことになってるけどまぁいいか。本当に振られてるんだし。


「うん、そんなとこ。それじゃお先に」


これからはあなたが頑張ってね、と心の中で呟いた。

年下からマウントを取られることには慣れている。
舐められやすいのは昔からだ。
普段から口数が少ないのと、強く言われても言い返せない性格のせいだと思う。

それに見た目も地味だし身体は貧相だ。
脱いだところで大した身体じゃない。

スレンダーと言えないこともないけど、服のセンスがイマイチなので私服の後ろ姿は中学生と並んでも違和感はない。

でも仕事中はせめて年相応の格好を、と心がけている。
今日はベージュのボウタイ付きVネックシャツとネイビーのフレアスカート。
ちゃんとした社会人の格好だ。
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